鉄×アートの世界①〜長坂さん後編〜

 

2本目ではいよいよアトリエにて長坂さんとお話したことを紹介していきます。
驚きや感動の連続。写真とともにお楽しみください。

 

ーどうして鉄という素材に絞って、作品づくりをおこなってきたのですか

鉄は、思っているより色々な風に操れてそこに見る反応や現象から多くの事を創造できるのが面白い。素材に秘めた情報が本当に膨大で、そこに惹かれます。
きっかけは学生の頃で、いくつかの金属に触れた中でも鉄を熱したりたたいたりする動作から伝わる素材の感覚がすごく身体的にリンクしたんだよね。その感覚が何からきているのか、身体と何か深い関係性があるのか、というはじめはそんな漠然とした興味から注目していった。元々そういった生命に関係する根源的なものにとても興味があって、この素材にはそのヒントが詰まってると感じてから鉄に焦点を絞る様になったんです。
産業に欠かせない人工的で無機質なイメージがある一方、どこか懐かしいぬくもりもあって人間の生活のもっと深い部分で結びついている存在...。その二面性と奥深さを知れば知るほど鉄という素材の魅力にどっぷりはまりました(笑)

以前は、錆を使って平面作品を制作してました。
腐食という経過を伴う現象は鉄の魅力の一つ、素材が変化していく様は見ていて飽きないですよね。それで鉄板に錆で絵を描いたり削ったりして作品をつくってたんだけど、「なんで鉄を使うの?」「錆は止めれないの?」と言われてしまうことが多くて、そこには現状の絵をとどめておいて欲しいという要望があったんです。変化を見せたい作品のはずが錆を止めなくてはならない、そんな意図とズレていく中で錆止めという大きな課題を抱えてしまった。でもその錆止めの試行錯誤から鉄を扱う独自の手法が色々と生まれて、より素材を知る大きなきっかけとなったんです。
そこで一旦、作品形態を変えてもっと鉄の腐食に迫った表現をすることにしました。

 

ーどのように錆で絵を描いていらっしゃったのですか。

錆びさせ方は様々で、時間をおいて錆びさすものあれば瞬間的に錆びさせるものもある。
はじめは時間をおいて錆びていく現象を利用していたんだけど、現象に任せすぎてしまうところをちょっと変えたくて筆書きですぐ錆びる様なものを扱うことが今は主流になってきるかな。それも時間が経つほど腐食が進んでいく。
でも筆をのせた瞬間に反応する黒と青と茶色が混じった様な宇宙にもみえるその色がすごく綺麗で、そこで錆を止めたいんだけど、どうしてもはじめよりは茶色くなっていってしまう。描いた瞬間に気に入った錆で絵を作り上げることができても、錆は進行するからそのあたりのイメージと錆の扱いが難しいところ。

 

ー社内で工場の見学をした際に「この瞬間の錆の色が欲しい!」って言う瞬間は確かにありました。錆って好きなタイミングで止められるんでしょうか。

ああ、これ残せたら綺麗だね、でも難しい。鉄鋼会社にいくら質問してみても、錆を止める方法はないって言うの。絶対。きっと科学的に解明していったら答えはあるのかもしれないし、そう思って鉄の組成とか色々と勉強はしているけれど、自然なことに手を加えるってやっぱり難しい。
だから別のやり口を探そうと思って、錆が育っていくのを楽しんでもらえる今の立体作品(fallen leaves-corrosion-)を作るようになったよ。

 

当社の工場見学に、すももが行った際に撮影した変化中の錆。
クリムトの絵に使われるようなゴールドが美しい。

 

ー立体の作品はどのように作ってらっしゃるのですか?

葉は薄い鉄板(0.2~0.3mm)で一枚一枚作って、枝は丸鋼やパイプを加工してます。作業は基本的にたたいて曲げて溶接してというシンプルな感じ。
葉と枝の溶接なんかは葉の鉄板がかなり薄いので火の扱いが一瞬の作業です。
あと、この作品は腐食に錆を落とす薬品(錆落とし)を使っています。錆落としは表面のものを全部取り去ってくれて、酸化被膜が剥がれて、表面が空気に触れるから逆に錆を発生させることができます。それを使うと錆びる速度が速くなるから扱いにも気をつけないといけないけど、枯れていく状況を表現できるんです。時間が経つにつれ、被膜がはがれ落ちそれが樹皮の様にも見える。

 

 

ー錆を発生させるのにサビ落しを使うのは面白いですね。長坂さんの立体の作品は本物の植物か鉄なのか、区別がつきません。

参考にする枝や葉は山に登って採って、担いで降りてきます(笑)
そこにある枝は鉄も混じってるよ。
(土を触りながら)これは鋼材会社さんから出たクズと車の解体で出た端材です。

 

 

ーえ、これ土じゃないんですか?!

これ全部錆ですよ!(笑)
これをインスタレーションとして広げて「森林土壌」を再現している作品に使うんだけど、展示に来た人たちは土だと思ってスルーしちゃうんですよね。この作品のメインは、実は枝葉より鉄くずの土なんです。

(錆でできた土のインスタレーション。中央には鉄板でできた葉。長坂さんの作品にはいつも驚かされる。錆だと言われた後に見ても土に見える。)

 

ー私たちもなにも疑わずに土だと思っていました。固くて銀色の一般的な鉄から出たものが、柔らかい土に見えるのはなんだか不思議な感じがします。

他にもたくさんあるよ。様々な技術を持った人たちの場で出てくる鉄はそれぞれみんな形が違くて、でも全部同じ鉄だと思うとすごく面白い。工場などで出る不純物と言われてしまう素材をもらってきては研究して、作品に活かしてます。

 

ー当社の耐候性鋼を仕上げたサンプルを見ていただきましたが、いかがですか?

さっきも話した通り、鉄を扱っている会社でさえ錆を止める方法はないと言うし、錆も普通に発生させたら鉄から剥がれてきてしまう。
私たちが扱う鉄の中で錆がいかに魅力的だが不安定なものかを考えると、建築の中に入れられるレベルで定着する錆を商品として出しているのはすごい。
完成度の高さに驚きます。

 

ー最後に、長坂さんにとって鉄とはなんでしょうか?

私にとって鉄は…『入口』。
鉄って環境の本当に色々なところにあって、外的環境だけでなく私たちの体の中にもある元素だよね。そう考えた時に「人と素材」の関係は「人と自然、物質、地球または宇宙」との関係ともいえる。大きく考えると自分の目では確かめられない関係性でも、鉄を通してその関係性を考えることができる。
だから鉄という入口を通して色々な世界をみて、自分が感じた見え方を表現したいと思ってます。

 

 

鉄と錆のアートな一面をご紹介しました。
この時間を過ごしたことで、メイとすももの鉄錆に対する意識がかなり広がりました。
インタビューと記事作成に助力いただきました長坂さんに心より感謝申し上げます。

 

文章 メイ、すもも

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